錦鯉 第5章

──BREEDER INTERVIEWより──
コイシのコニシさんの、

「人の印象に残る鯉を」

第5章 オリジナリティをいかに出すか印象に残る鯉を1本でも
──親鯉を新しく導入する時は、それまでの親にないような違ったものを求めますか。
小西 やっぱり似たようなものになるんじゃないですかね。ボディは頭からガツッときて、流線形で、それは皆さんが好きなような体型ということで、今はそういう鯉が増えてきましたからね。東京大会の80部、85部、ほとんど一緒ですものね。理想の体型というとまた難しいかもしれないけど、やっぱり崩れない、腹のポチャッとこないきちっとしたやつですね。今、親に使っている鯉 (写真A) なんかは良い体型だと思います。せっかく良い親鯉を分けてもらってるから、それを土台にして良い鯉を作らにゃいけませんね。またこ
の鯉は良い鯉が出来ると思います。

──阪井産の紅白でこれまで親に使ったことは?
小西 昔、鯉屋を始めて3年目ぐらいに阪井さんから良いメスを分けてもらって、それでも結構出来ましたけど、いつか阪井さんより良い鯉を1匹でもいいから作りたいと思いま
してね。そうしたらやっぱり阪井産の鯉を使っていてはなかなか難しいかなと思って、よその親鯉にシフトしたりしていろいろやってみたんですけど、やっぱり紅白は阪井ですね(笑) …はい。今わかったですね
(笑)…。

──(笑)…。とはいえ、阪井系の鯉を作ろうというのではなくて?
小西 はい。同じものでは面白くないですから、ちょっと調味料を加えませんとね。

──今はどこの生産者さんでも良い体型の親を求めて作っていますから、どこからでも似たような鯉が出来てきそうな気がするんですか?
小西 私はたまにしか新潟に行きませんけど、前回行った時には、なんか阪井さんの鯉みたいになったなと思ったところもあります。でも、やっぱり自分のところの血を大事にしているところはそういう鯉を作っていますものね。オリジナリティをいかに出すかですね。

──系統についてはどうですか。
小西 系統が薄くなるとか、そういった面ですか? 系統の鯉なんか1腹に何本かしかいないと思います。その血を引いたやつがですね。そういうやつをその人が残すか残さないかで、現にさっきの3才(写真⑤)なんかは古い血が出ていると思いますよ、昔の仙助の。 昔の仙助と言っても知ってる人も減ってきたかもしれませんけど、形とか紅質とかいうのはずっと自分の記憶のなかにありますので、これはどこの系統かなというのははっきりわからなくても、なんとなくですけど、そういうものが出てくればわかりますよね。

──なるほど。
小西 それからやっぱり、親に似ますからね。親には自分が納得した鯉を使っておかないと、全部が全部納得はできませんけど、納得できるところをうんと持っていないとです
ね、妥協点はなるべく減らして。そうでないと選別をしていても甲斐がないですから。

──今年は選別し甲斐が?
小西 あったと思います (笑)。紅白もここ何年かで新しい親が入りましたけど、それなりにいろんな鯉が出来ています。2才、3才、4才と、年代ごとに面白い鯉が何匹かずつい
ますけど、1本、来年東京に連れて行こうという鯉がいるんです。ちびまる子ですけどね。久しぶりに丸筑らしい鯉が出来たので皆さんにどう評価してもらえるかなと思って…。
 自分もあと残り何年あるかわかりませんので (笑)‥良い鯉だなと言われる鯉を1本でも、自己満足で終わるかもしれませんけど、やっぱり人に見てもらいたいですもんね。人に評価されるかされないかは別ですすけど……まあ、品評会に入れば入ったほうが嬉しいですけど (笑)…
それより印象に残るというか…それが品評会で上に行けば一番良いんでしょうけど (笑)…。そういう鯉を、九州のなかで満足しているのではなくて、東京で何本づつかは毎年(笑)。見てもらおうと思っているんです。