錦鯉 第6章

──BREEDER INTERVIEWより──
コイシのコニシさんの、

「人の印象に残る鯉を」

第6章 造りたかった飼育専用池に着手 10年ごとの節目がまた来たと
──今、新しい池も造っているそうですが?
小西 新潟で全日本があった時に、41回大会だったか、私ももう一度頑張ろうと思って10年計画を何人かに発表したんですけどね。まず初めにお金を貯める (笑)…ある鯉屋さんに言ったら、それは最終日標でしょうと言われてしまったんですけど。

──(笑)
小西 私は良い鯉を作るのが最終目標ですからね (笑)。もう4年経ちましたけど、結局第1目標もできませんでしたけど、やっぱりそれが一番難しいですね (笑)…。で、なんでお金を貯めるかというと、それは良い池を造りたかったんですね。ここ何年も、良い泉水を持たないと勝負にならんなと思っていましたからね。
 私は堤飼育ばっかりやってきたけど、良い鯉を仕上げている鯉屋さんはみんな、若いうちは泥でやって、あとは全部泉水で飼っていますから、自分もそれをやりたくて、ここ
3年ぐらいハウスの一番奥の35トン池で練習していたんです。で、ようやく助走期間が終わって、来年から本格的な泉水飼育をしてみようかなと思って、今新しい池を造っているところなんです。お金が貯まるのを待っていたらいつになるかわからないから (笑)…まず造って少しずつ返していこうと。

──飼育がやはり重要と?
小西 そうだと思います。今年の春に新潟に行かしてもらって、やっぱり皆さん設備に金を掛けているし、そういうところしか残っていかんなと思いましたね。最近特に外国へ審査で行くと、すごい池がありますものね。鯉では負けとらんと思うんですけど、設備では…。それで、そんないっぱい造らなくていいから1つだけ、きちっとした池を持たなければいかんなと何年も思っていましたけど、ようやく出来つつあります。

──何トンくらいの池になりますか。
小西 何もかもで80トンぐらいで、14~15本飼ったらいいかなと思っています。またすぐ足らなくなるかもしれませんけど (笑)。

──九州の愛好家は自分で大きい鯉を飼育される方が結構いらっしゃったと思いますが、今もそういう人は多いですか。
小西 うちのお客さんでは1人ぐらいしかいないなあ。


──やっぱり預かりが多い?
小西 ほとんど委託です。KHVのこととかあってから、自分が期待した鯉でもお客さんの池に入れてしまったら、もうあとはどうしようもないですもんね。それよりも自分で納
得できるまで飼ってやったほうが良いかなと。
 それに、最近は池を持たない人もおりますからね。池を持たなくてもうちが預かって飼えますよと、水槽で飼ってもらうというのももちろん大事なことだと思いますけど、池がなくてもうちに来て見たい時に見てもらって、そういうこともできますよというのでもやってます。

──ほう。                 
小西 池を造るとはした金じゃあ出来ませんけど、鯉なら買えるというお客さんはいますから、あとは預かり賃だけでですね。将来的には、うちの嫁さんは鯉を見ながらコーヒーを飲めるような鯉カフェを目指していますけど (笑)。

──ああ、いいですね。
小西 そういうのも面白いかなと思います。初めて来る人が鯉を見たらびっくりしますものね。「大きい」「綺麗」「高いでしょう?」「食べられんのですか?」 (笑)…いろいろ
ありますけど、やっぱり感動する人が多いですね。見たことがないからですね。だから、見れる所を作っていかないと。

──やはり、錦鯉をもっと多くの人に知ってもらいたいですよね?
小西 うちにドイツから来る鯉屋さんがおりましてね、初めて日本に来た時に何がびっくりしたかというと、日本ではどこの家でも庭があって池があって、鯉が泳いでいると思っていたら、ほとんどなかったと、それがびっくりしたそうです。

──ああ…。
小西 だから、やっぱり本当に良い鯉をもっと見てもらう所が必要だと思います。うちに来る方で、まだ池はないけど鯉だけ買って、池は来年造るという方がいるんです。若い時は鯉を買えなかったけど、やっと今の歳になって鯉を買えるようになったからといってですね。若い時にどこかで鯉を見ていたからそれが可能になった時にやりたいと思ってもら
えたわけです。だから、良い鯉を気軽に見れるような場所があったらいいなと。新潟には錦鯉の里というのがありますけど、ああいう所が各都道府県に一カ所ずつぐらいあってもいいと思いますね。うちには中学生の子も来ますけど、そういう子にもっともっと見せてやりませんとね。

──本当にそうですね。
小西 ほとんどの人が鯉を見たら「いいな」と言いますからね。「もう見らんでいい」とかいう人は、まずいないですから (笑)。
 また、外国に行ったら外国で、日本の文化として見てくれてますから嬉しいですね。それによく勉強していますよ。インドネシアから若い鯉屋さんが来てますけど、まあよく日本の鯉を知ってます。ものすごく勉強してます。

──私も最近それを感じます。海外の人も本当によく勉強してるなと。
小西 それも嬉しいですけど、負けちゃならんですものね。その上を行かないと。前はちょっと顔を知ってるような外国の人に 「ちょっとうちに来んですか」と気軽に言えたんですよ。それが、外国に行ってその人の池とか、いろいろな池を実際に見ると、もう気軽にちょっとうちに遊びに来んですかとは言えなくなったんです。なぜかというと、設備がまったく違うもんだから。
 鯉では負けておらんですから、それでさっきも言ったように、これはもう誰が見てもおかしくない池を1つ造らんといかんなと思って今造ってるわけです。私は鯉屋になってちょうど30年ですが、ハウスを作ってもう20年になるから、10年ごとに節目というのがあると思いますね。今年はまた節目かなと思っているんです。

──また、新たに意欲を持って鯉作りに取り組もうと?
小西 はい (笑)。九州の若手も頑張っておりますし、うちの息子がまだ高校生なんですが、鯉屋をやりたいということだから、やっぱりずっと引き継いでいってもらいたいです
からね。

──それはまた楽しみですね。今日はありがとうございました。

(2013年10月31日取材)