鱗光 表紙のことば

「愛鱗紹介」

中井 稔(大阪) 葡萄衣 84cm 6歳メス
 表紙の鯉は中井稔氏の愛鯉で、6歳84cmの葡萄衣である。
 過日に行なわれた「第45回全日本総合錦鯉品評会」で種別日本一賞に輝いたこの逸品は、尾形養鯉場の作出によるもので、2歳のときに丸筑魚苑の小西健治氏がビピッと感じて思わず、スカウトした鯉にほかならない。
 3歳のとき中井氏の目に留まって、以降、5歳まで丸筑魚苑の野池で飼育され、6歳からは泉水飼育に移されと、まさしく手塩にかけて育てられた愛鯉である。
この逸材は藍衣とも葡萄衣とも言えぬ独特な色合いで、また、その複雑多岐にわたる豪壮華美な色彩を載せた純白のキャンバスがえも言われぬ趣を醸し出し、その風合いを余計に引き立たせている。
 無理のない伸びやかな体形からは、まだまだ先のある鯉であることが存分に垣間見えてくる。これから丸筑魚苑の新ハウス池〝TMポンド″で飼育されるとなれば、中井氏が来季に掛ける思いは一入なのではないだろうか。
 丸筑魚苑のある田主丸は、筑後川の中流に位置している。葡萄のブランド「巨峰」発祥の地として知られるだけに、筑後川下流の尾形養鯉場で生まれた「藍衣」が、上流へ登って「葡萄衣」に変化した容姿をうかがうと、葡萄(巨峰)の産地だけに、「丸筑魚苑と葡萄衣」との不思議な緑を感じてならない。